若紫(11・12) 北山から戻った源氏

p50 – 58
11.源氏、葵の上と不和 紫の上を思う
 〈p274 源氏の君は御帰京になられますと、〉

 ①源氏、先ずは帝に挨拶。そこへ左大臣が現れ源氏を車に乗せて自邸に連れ帰る。 
  尽くす左大臣、やや迷惑気味の源氏。

 ②さて葵の上の様子。この辺が重要。
  這ひ隠れてとみにも出でたまはぬを~~~
  ただ、絵に描きたるものの姫君のやうにしすゑられて、うちみじろぎたまふこともかたく、うるはしうてものしたまへば
   →これでは源氏も手を焼いたのだろう。作者も読者に葵の上が悪いと訴えてる感じがする。
 
 ③源氏   いかがと問ひたまはぬこそ
  葵の上  問はぬはつらきものにやあらん 
  源氏   問はぬなどいふ際は異にこそはべるなれ 

   →古歌を引いてこんな間接的な会話やってても仕方なかろう、、、と思うのですが。

 ④そして寝所に誘うが葵の上は付いていかない。当然でしょう。
  ここは 1)いつもの調子で優しい言葉をかけまくる
   Or 2)有無を言わさずお姫さま抱っこで夜の御座に連れて行き押し倒す
  しかないのでは。

 ⑤こうなったら考えるのは紫の上のこと。葵の上への不快感が募れば募るほど紫の上が可愛く思える。拉致してでもと決心した一瞬ではないでしょうか。

12.翌日、源氏 北山の人々に消息をおくる
 〈p278 明くる日、北山の僧都にお手紙をお上げになりました。〉

 ①尼君との文・和歌の贈答。尼君の応答は進展がない。

  [参考:当時幼童の手習いに使われた和歌二首]
   難波津に咲くやこの花冬ごもり今は春べと咲くやこの花 (古今集仮名序)
   浅香山影さへ見ゆる山の井の浅き心をわが思はなくに (万葉集)

  尼君の返書に難波津が出て来たので源氏はすぐ浅香山を引いて返事をしている。

 ②焦る源氏、一番信頼できる惟光を遣いにやる。
  源氏→惟光 少納言の乳母といふ人あるべし。尋ねて、くはしう語らへ 
 
  源氏はどう攻めたら攻略できるかちゃんと掴んでいる。先ず乳母だ、それには惟光だ、「オイ惟光、お前の出番だ、少納言を手なづけろ、お前の得意とするところだろう。うまくやれよ」、、、って感じでしょうか。

さて、そうして藤壷とのコトに進むのであります。

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8 Responses to 若紫(11・12) 北山から戻った源氏

  1. 青玉 のコメント:

    左大臣、何処までも源氏に尽くす・・・婿可愛さと言うよりもこれはもう娘可愛さでしょうね。

    葵上、生きた人形のようです、これではいくら気品高く美しかろうと興ざめです。
    みめよりもやはり心ですね。
    そんな時、心に浮かぶのはあどけなき紫の上、源氏ならずとも当然でしょう。

    もう翌日には尼君への行動開始、切り替えの早い源氏。
    そして惟光の出番、惟光、ガッテン!!と言うところでしょうか。

    一連の古歌の引き歌、注釈をしっかり読まないと理解が難しいです。
    立文に対して結び文(中に小さくひき結びて)雅びでロマンチックなな感じです。
    こんな恋文をもらえばグッときますよね。

    • 清々爺 のコメント:

      ここでは葵の上のことを考えてみたいですね。

      この重要な人物について作者は多くを語らずつっぱねた(意地悪な)描写に終始してます。セリフはないし心内語もほとんどない、和歌も詠ませていない。「いくらなんでも不公平じゃありませんか、式部さん」と思うのですがいかがでしょう。

      一般的にお姫さまお嬢さまは箱入りで何不自由なく大事に育てられるので世間知らずでプライドだけ高くなってしまう。六条御息所しかり女三の宮しかり。

      でもやはり教育でしょう。左大臣が娘可愛いと思うのならもっと違った教育方法があったのではないでしょうか。大宮みたいな人情に篤い人がお母さんなのに、不思議ですね。左大臣は娘をもっと源氏好みにしたて早く娘を産ませて入内させるのに情熱をもやすべきだと思うのですが、、、。

      でもそれでは物語は面白くない。葵の上は物語の中でも読者の心の中でも疎んじられる本当にかわいそうな女性です。この後の葵の巻は涙なくして語れないのです。

  2. 式部 のコメント:

    若紫の巻だけ読むと、葵の上を好きになる人はあまりいないと思います。少し我慢して読み進んで「葵」の巻にはいると、源氏の君のいたらなさ、葵の上の可愛さ、いじらしさがでてきて、いろいろ考えさせられます。何らかの出来事がないと、気付けないことって多いのでしょうね。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      やはり心の擦れ違いって怖いですね。普段からお互いザックバランになるのが一番なのでしょうがそれができれば苦労はない。現代の人生相談でも尽きることのないテーマですね。葵の巻まで継続して読み解いていきたいと思います。

  3. 青玉 のコメント:

    現代訳で「葵」を読み流した時は、確か葵に同情し源氏に立腹したりもしたはずなのにこの部分だけ読むととても葵がつれなく冷たい女性に感じてしまうのは何故?

    よく考えれば夫婦の問題は片方だけに原因があるわけではないですよね。
    必ず双方に言い分がありそうさせる原因もお互いにある筈です。
    ごく一般的な現代の普通の夫婦関係を見てもそうではありませんか?
    葵の態度には大いに源氏にも原因がある筈です。
    コミュニケーション不足ですね。
    これで片づけてしまうのもどうかと思いますが源氏のあやにくな性格も大きな原因の一つのように思えます。

    後の「葵」に期待しましょう。

    • 清々爺 のコメント:

      まさしくおっしゃる通りだと思います。折しも今、紅葉賀の同じような部分にコメントをつけているのですが、青玉さんのコメントと同趣旨のことを書いたところです。葵に行くまでじっくり考えていきましょう。

  4. 進乃君 のコメント:

    葵の上が登場!
    生々しいですね。コメント欄も賑わっていますね。
    でも世にはびこる葵の上のイメージとは少し違いました。

    源氏が、「どうして、あなたは、いつも、そんな風に知らん顔しているんですか、と怨みがましいことを言うと、「 問はぬは、つらきものにやあらむ」と言い返します。
    この「問はぬ」はと「訪わぬ」の意匠返しと言う注釈がありました。
    これは巧い!これは恨み言葉なのです。

    私は、この氷の様な葵の上が、好きになりました。こう言う人をとろけさしてこそ源氏の源氏たる由縁と思うのですが、この先、そう言う展開になっていくのか、楽しみです。

    • 清々爺 のコメント:

      コメントありがとうございます。

      ほんとに「この夫婦は一体どうなってんのや」と思いますよね。氷の様な或いは人形のような葵の上を理解してあげようという暖かい気持ち、いいですね。

      源氏も源氏だけど葵の上もいかんと思うのは歌の贈答がないことです。古歌を引いて恨みやら言い訳やらを応答してても氷の関係は融けあわないのじゃないでしょうか。やはり真正面から自分の歌で恨みも怒りもぶつけるべきだと思うのですが。。

      結局この二人は歌を詠み合うことがない。紫式部はこの正妻に敵愾心でも抱いてたのでしょうか。

      (源氏はこういう人の心をとろけさせられるのか、、お後をお楽しみに)

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