p262 – 272
16.源氏、東山より帰邸後、重くわずらう
〈p217 源氏の君は、横になられるとそのままほんとうに〉
①大事な皇子(と言っても臣籍降下したが)が病気になった。そりゃあ帝はじめ宮中は大騒ぎ(さすがに弘徽殿女御の悪態は出て来ない)。祈祷・祭・祓・修法など病気に効くことはなんでもする。義父の左大臣も心配この上ない、甲斐甲斐しく面倒をみる。
②右近を心配し面倒をみる。これで右近はイチコロ、源氏に忠実な女房となる。
→ 玉鬘発見の布石
③「足を空にて」 うろたえる様を表わす。よく出てくる
「内裏より御使雨の脚よりもけにしげし」 「雨の脚よりも」が面白い
17.源氏、病癒え、右近に夕顔の素性を聞く
〈p220 九月二十日の頃には、すっかり御全快になりました。〉
①右近から夕顔の素性を聞く。
父は三位中将、母は記述なし。享年19才(源氏より+2)娘が3才
②頭中が3年ばかり通った(この時も頭中は素性をしらなかった、、チト不思議)
頭中の北の方の実家(右大臣家)からの圧力(ここでも右大臣家は悪者)
③忘れ形見の幼子を得たいと源氏が右近に頼む。
→ 完全に玉鬘十帖への伏線
④p272 1-6行目 源氏が語る女の理想像
「はかなびたるこそはらうたけれ。かしこく人になびかぬ、いと心づきなきわざなり。みづからはかばかしくすくよかならぬ心ならひに、女は、ただやわらかに、とりはづして人に欺かれぬべきがさすがにものづつみし、見ん人の心には従はんなむあはれにて、わが心のままにとり直して見んに、なつかしくおぼゆべき」
→ 男の勝手でお叱りを受けるかも知れませんが100%賛成であります。
(あくまで現実を離れた理想です。でも理想を求めるのは大事ですぞ!)
⑤見し人の煙を雲とながむれば夕の空もむつましきかな (源氏 独詠)
忘れようとしても忘れられない夕顔、、しみじみしたいい歌だと思います。
臣籍降下したとはいえ源氏は帝にとっても左大臣にとってもこの上なく大切な存在、周囲の心配が「足を空にて思ひまどふ」や「御使雨の脚よりもけにしげし」によく表れていますね。
このような表現ができるなんて素敵です。
ここでは「右近」のことを「容貌などよからねど、かたはに見苦しからぬ若人なり」と評していますね。
玉鬘の伏線がこの頃から張られているということはすでに後の玉鬘の構想ができあがっていたのでしょうか、すごいですね。
この源氏の理想像、自身に当てはめてみましたら全て100%逆でした。
源氏には一番嫌われそうです。
最後の歌、とても良いですね。哀愁帯びて余韻の残る歌です。
夕顔への挽歌でしょうか?
お忙しい所、いつもありがとうございます。
1.右近との会話で夕顔の素性やら経緯などを明らかにする。上手な話の進め方ですね。右近が情の籠った言い方で夕顔のことを語るので源氏はますます夕顔のことが忘れられなくなってしまう(死んだ人は美化される)。
2.この段は完全に玉鬘十帖への伏線だと思います。玉鬘の巻の冒頭は、
年月隔たりぬれど、飽かざりし夕顔をつゆ忘れたまはず、心々なる人のありさまどもを見たまひ重ぬるにつけても、あらましかばとあはれに口惜しくのみ思し出づ。
となっており、そのまま17年後に繋がって行くのです。玉鬘十帖が全て構想されてたかはともかく、右近が夕顔の忘れ形見を探しあてて源氏のところに連れてくるというところまでは構想されていたのだと思います。
3.女の理想像、、、そうですか。それは失礼しました。理想と言うより夢想なんでしょうね。紫の上も玉鬘も源氏が精魂込めて育てあげたのに最初はともかく結局はそうならなかったのですからね。理想の女性は早く死なせてしまい現実はそうならないことを訴える、、、紫式部のエライところだと思います。