先年の講読会で各帖2首(原則)づつ和歌を選びました。基準は歌の良し悪しというよりその帖を代表する歌、すなわち帖名或いは帖名に因んだものが読み込まれている歌が中心となっています。歌でその帖を思い出そうとの趣旨です。
今回2年に亘り源氏物語を再読し改めて私にとってインパクトの強かった5首をピックアップしてみました。
(物語順)
①見てもまたあふよまれなる夢の中にやがてまぎるるわが身ともがな(源氏@若紫)
→若紫でいきなりこの禁断の契りの場面が出てきたのにはびっくりしました。私のテキストには「こんなことってあっていいのか、病人だぜ!」と書いてありました。
②なげきわび空に乱るるわが魂を結びとどめよしたがひのつま(物の怪@葵)
→源氏の正妻でありながら源氏と心を通じ合えることなく六条御息所の生霊に憑りつかれ死んでしまう葵の上が哀れです。現実にもこんな夫婦関係あるのだろうなと思いました。
③こほりとぢ石間の水はゆきなやみそらすむ月のかげぞながるる(紫の上@朝顔)
→紫の上の哀しい歌。源氏が一番愛したのは紫の上だと思いますが一番甘えたのも紫の上でしょう。女君のことをベラベラ喋られても困りますよね。「こほりとぢ」に紫の上の絶望感を感じます。
④起きてゆく空も知られぬあけぐれにいづくの露のかかる袖なり(柏木@若菜下)
→第二部はやはり柏木と女三の宮の密通でしょう。源氏と藤壷の密通はあっさり書かれていますがこちらは詳細に書かれています。私の投稿でも「この26段はいつ読んでもすごい、汗が出てきます」となっています。密通をしたが上まで上り詰めた源氏、密通をしたがために死んでしまった柏木。でも柏木の密通で苦しめられた(倉本先生の罰か)のは結局源氏だった。。すごい構図だと思います。
⑤おぼつかな誰に問はましいかにしてはじめもはても知らぬわが身ぞ(薫@匂兵部卿)
→宇治十帖は結局この歌が原点なのだと思います。第二部であれだけ書きこんだ密通事件の落とし子を主人公にしない手はありませんものね。匂宮と浮舟だけではとても宇治十帖にはならなかったでしょう。
番外
・草わかみひたちの浦のいかが崎いかであひ見んたごの浦波(近江の君@常夏)
→私は人物談義で近江の君はゴメンだと書きましたがこの歌は大好きです。源氏物語に色合いを加える登場人物としてはこの人が一番でしょう。だって忘れられませんものね。
・女郎花しをるる野辺をいづことてひと夜ばかりの宿をかりけむ(一条御息所@夕霧)
→劇的な行き違いをもたらした歌。私はこの歌一首で夕霧物語が語れると思っています。
リストアップした百首以外にもいい歌、印象に残った歌あるかと思います。好きな歌、面白かった歌、驚いた歌、、、何でも書き込んでください。
私の好きな歌(場面がパッと浮かぶ歌)5首です。
① 心あてにそれかとぞ見る白露の光そへたる夕顔の花(夕顔)
夕顔は好きではないのにこの歌はなぜか好きです。
② 手に摘みていつしかも見む紫のねにかよひける野辺の若草(若紫)
若紫を端的に現わしていてこれ以上の表現はないように思います。
③ 秋の夜のつきげの駒よわが恋ふる雲居をかけれ時のまも見ん(明石)
明石に向いながらも紫の上を恋い忍ぶ源氏の気持ちが痛いほど伝わります。
④ 年月をまつにひかれて経る人にけふ鶯の初音きかせよ(初音)
姫君を想う母、明石の君の心情泣けました。
⑤ 橘の小島の色はかはらじをこの浮舟ぞゆくへ知られぬ(浮舟)
哀れ浮舟、いずこぞゆかむ
以上、直感で選びました。
(雨潸潸、さすがにゴルフも中止になりました)
ありがとうございます。何れもいい歌、物語に意味のある歌ですね。
改めてこれ全部紫式部が一人で創作したのだと思うと脱帽するしかありません。ホントえらい人がいたものであります。