東屋(18・19) 中将の君、中の君と語らう

p58-66
18.中将の君、中の君に浮舟の身柄をゆだねる
 〈p224 中の君のお前に出て来て、〉

 ①中将の君、中の君と対面。浮舟の行末を頼もうとして中の君に会いに来た中将の君としてはここは大事な場面である。

 ②中の君 「大将の、よろづのことに心の移らぬよしを愁へつつ、浅からぬ御心のさまを見るにつけても、いとこそ口惜しけれ」
  →中の君は中将の君の気持ち(浮舟を薫と縁づけたい)を解っているのでさりげなく薫のことを話題に出す。

 ③中将の君「大将殿は、さばかり世に例なきまで帝のかしづき思したなるに、心おごりしたまふらむかし」
  中の君「かの君は、いかなるにかあらむ、あやしきまでもの忘れせず、故宮の御後の世をさへ思ひやり深く御後見歩きたまふめる」
  →薫について心の探り合いである。

 ④中将の君は慎重ながら浮舟の不幸を訴え中の君に後見を依頼する。
  かの過ぎにし御代りに、、
  一本ゆゑにこそはとかたじけなけれど、

  →薫が慕った亡き大君によく似た血のつながった妹。殺し文句である。

 ⑤母君、いとうれしと思ひたり。ねびにたるさまなれど、よしなからぬさましてきよげなり。いたく肥え過ぎにたるなむ常陸どのとは見えける。
  →受領の妻に落ちぶれたとはいえ昔の面影を残し小奇麗な中将の君、ただ太ってしまった! この一言で中将の君の肝っ玉母さん的な感じがよく分かる。

 ⑥浮島(塩竃)、筑波山
  →浮舟の生い立ちの様が象徴的に語られる。

19.薫、来訪 中将の君かいま見て感嘆する
 〈p228 この姫君は、容貌も性質も、〉

 ①浮舟の様子が描写される。
  容貌も心ざまもえ憎むまじうらうたげなり。もの恥ぢもおどろおどろしからず、さまよう児めいたるものからかどなからず。
  →いじらしく可愛い。恥ずかしげだがおっとりしており一廉の才気あり。
  →いいじゃないですか。。

 ②そこへ薫登場、中将の君が覗き見る。
  「いで見たてまつらん。ほのかに見たてまつりける人のいみじきものに聞こゆめれど、宮の御ありさまにはえ並びたまはじ」
  →匂宮を見て目のくらんだ中将の君はそれ以上ではないだろうとやや期待を下げる。

  だが、薫を見て、
   げに、あなめでた、をかしげとも見えずながらぞ、なまめかしうきよげなるや。
  →素晴らしい!これなら浮舟を頼むに言うことなし!と感じ入ったことだろう。

 ③それにしても薫は匂宮のいないスキをついてよく中の君の所にやってくるものですねぇ。

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2 Responses to 東屋(18・19) 中将の君、中の君と語らう

  1. 青玉 のコメント:

    中将の君、なかなか世慣れたしたたかで抜け目ない女性ですね、。
    娘のためなら母は強しです。
    中の君の同情を期待しながら事の運び方は大したものです。
    いたく肥え過ぎにたるなむ常陸どのとは見えける。この表現的確ですね。

    中の君の目を通しての浮舟の容貌と様はとても好意的です。
    さて薫を垣間見した中将の君。
    匂宮に優るとも劣らない薫に驚愕の思いだったことでしょう。
    いよいよ薫、浮舟の接近でしょうか?

    中の君訪問の薫の言い訳、面白いですね。
    主不在中訪問のあれやこれやの言い逃れです。

    • 清々爺 のコメント:

      いつも適確な解説、ありがとうございます。

      中将の君の描き方は心情も容貌・様子もとっても現実的で非常に分かり易いですね。太り気味で声も大きく物怖じせずちょっと図々しい感じだったのでしょうか。その母と対照的に浮舟はほっそりしてて声も小さく控えめではかなげな感じがします(読者にそう思わせるように書かれていると思います)。

      匂宮を見て圧倒された中将の君に次ぎは薫の君が現れる。この順番がいいですねぇ。中将の君にとっては匂宮は雲の上の人だが薫はひょっとして手が届くかもしれない人。中将の君は「ああすごい、浮舟を是非このお方に!」と自分のことのように顔を赤くして願ったのじゃないでしょうか。

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