p32 – 41
5.薫、弁を召して互いの世の無常を嘆きあう
〈p27 弁は、「こうしたお供を致そうとは、〉
①弁は中の君に同道せず出家して宇治山荘に残る。
→留守番役になる。今後もまだまだ重要な出番が待っている。
②弁 げにむげに思ひほけたるさまながら、ものうち言ひたる気色、用意口惜しからず、ゆゑありける人のなごりと見えたり。
→年取って頼りない弁ではあるが作者も一応の敬意を払っている。
弁 さきにたつ涙の川に身を投げば人におくれぬ命ならまし
→薫にとって弁は出生の疑問を語ってくれた大事な人、感謝の気持ちでいっぱいであったろう。
6.中の君、宇治にとどまる弁と別れを惜しむ
〈p30 弁は、薫の君の苦しんでいらっしゃることや〉
国宝源氏物語絵巻 早蕨の場面です。
①弁 人はみないそぎたつめる袖のうらにひとり藻塩をたるるあまかな
中の君 しほたるるあまの衣にことなれや浮きたる波にぬるるわが袖
→世話になった弁と別れて京へ行く中の君。さぞ名残り惜しかったであろう。
②中の君 世に住みつかむことも、いとありがたかるべきわざとおぼゆれば、さまに従ひてここをば散れはてじとなむ思ふを、さらば対面もありぬべけれど、、
→京へ行ってもすぐ宇治へ帰って来るかもしれない、、中の君の真情であったろう。
7.上京する中の君、憂えと悔いの心をいだく
〈p32 山荘の中はすっかり掃除をすませ、〉
①中の君上京の準備、匂宮では至らぬところまで薫が万端面倒をみる。
②大輔の君(女房)
あり経ればうれしき瀬にもあひけるを身をうぢ川に投げてましかば
→京へ付いて行く女房たちはランラン気分。弁との対比が生々しい。
→こういう女房を登場させて人の気持ちの違いを浮きだたせるところがさすがである。
③2月7日京へ 宇治からの道のり
道のほど遥けくはげしき山道のありさまを見たまふにぞ、つらきにのみ思ひなされし人の御仲の通ひを、ことわりの絶え間なりけりとすこし思し知られける。
→牛車でゆっくり行ったのでは時間もかかったことだろう。
→中の君は匂宮がこんな山道を三日連続で通ったこと、また大君死去の時には雪を冒し深夜に来てくれたことをつくづく(少しではなく)有難く思ったのではなかろうか。
④中の君 ながむれば山より出でて行く月も世にすみわびて山にこそ入れ
→中の君の絶唱。昔は取り戻せない。未来に立ち向かうしかありませんぞ!
そうですか、弁は中の君上京に際して尼になり宇治に残りましたか。
それぞれの和歌の贈答が哀切極まりないですね。
宇治を去る女房たちの華やぎと別れを惜しむ者の愁嘆が対照的で無常感を誘います。
中の君、新しい世界への旅立ちの不安と宇治への名残りに揺れる心情が切ないです。
せめて中の君にだけは幸せになってもらいたいものです。
ありがとうございます。
大君が亡くなり中の君が匂宮に引き取られて京へ移る。普通ならこれでお終いでしょう。中の君は大君と違いまあ常識にかかるお姫さまであるし夫匂宮も情熱を注いでくれている。女房たちも京での華やかな暮らしに希望に燃えている。宇治での不幸だった日々とはこれでお別れ、、、今まで苦労した中の君にもやっと幸せがくる、、よかった、よかった。。。
ってふうにはいかない所が宇治十帖のすごさなんですね。まあどこまでいくか、お付き合いしてください。