p22 – 31
3.中の君、宇治を離れがたく思い嘆く
〈p19 宇治でも、器量のいい若い女や女童などを雇って、〉
①京へ移転の日が近づく。張り切る女房たち。中の君の悩みは深い。
→結婚するな、宇治を離れるな、父の遺言に決定的に背くことになる。
②匂宮「浅からぬ仲の契りも絶えはてぬべき御住ひを、いかに思しえたるぞ」
→これも道理。遠い宇治には匂宮は通えない。結婚は続けられなくなる。
③中の君 いかにはしたなく人笑はれなることもこそなどよろづにつつましく、心ひとつに思ひ明かし暮らしたまふ。
→独りになった中の君、住み馴れた宇治を離れ京へ行くこと、とてつもなく高貴な人の妻になること、いかほどか心細く怖かったことだろう。
→現代でも地方で育った女性が結婚し初めて親と離れて東京の新郎の所へ行くケースなど、新婚生活に胸は弾むものの一方では「怖い、行きたくない」と臆してしまうのではなかろうか。
4.薫の配慮 宇治を訪れ懐旧の情にひたる
〈p20 徐服の祓いに川辺に行くための御車や〉
①京への引越しにあたっての薫の細やかな配慮
中納言殿より、御車、御前の人々、博士など奉りたまへり。
→牛車や前駈の人々は分かるが陰陽博士というのが面白い。
→除服が僧侶でなく陰陽師とはどういうことだろう。
②転居の前日、薫が宇治を訪れる。
→前年末京へ帰って以来1ヶ月余振りである。
③薫、大君を偲ぶ
「わが心もてあやしうも隔たりにしかな」
→「何であの時思いを遂げておかなかったのだろう!」
→大君のためにも自分のためにも。悔やんでも悔やみきれなかったろう。
④かいばみせし障子の穴も思ひ出でらるれば、寄りて見たまへど、
→描写が細かい。男ならだれでも絶対するように思えます。
⑤薫、中の君と対面。互いに大君を偲ぶ。
いみじくものあはれと思ひたまへるけはひなど、いとようおぼえたまへるを、心からよそのものに見なしつると思ふに、いと悔しく思ひゐたまへれど、かひなければ、その夜のこと、かけても言はず。
→薫は自分の優柔不断さで結局は大君も中の君も両方取り逃がしてしまう結果となったこと、悔しくてたまらなかったろう。
⑥伊勢物語の古歌を引いて亡き人(八の宮・大君)&宇治を偲び合う二人
月やあらぬ春や昔の春ならぬわが身ひとつはもとの身にして(業平)
五月まつ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする(古今集)
(この伊勢物語60段は中々含蓄深い話です。読んでみてください)
中の君 見る人もあらしにまよふ山里にむかしおぼゆる花の香ぞする
薫 袖ふれし梅はかはらぬにほひにて根ごめうつろふ宿やことなる 代表歌
→「根ごめうつろふ宿やことなる」、薫の実感が表れています。
思い出多い宇治と匂宮の間で揺れ動く中の君の心情、解りますね。
上京にあたり薫のきめ細やかな心遣いには驚いてしまいます。
若き貴公子(お坊っちゃま)がここまで配慮ができるとは、なかなかできないことです。
まるで女性のような気がつきようです。
そう言えばこういう場面での源氏も細やかな配慮を欠かさない人でしたね。
大君を偲ぶ一方で中の君への思慕。
すべてが自業自得とはいえ二人の姫君を失うことになった薫の後悔、無念さは如何ばかりでしょう。
しかも中の君の上京にあたり最大限の援助を惜しまない、八の宮との約束とはいえどこまで人の良い薫なんでしょうね~
このやるかたない気持の吐け口はあるのでしょうか?
私が男なら爆発しそうです。
ありがとうございます。
全く薫は気遣い、心遣いの男ですねぇ。
源氏、夕霧、薫に共通して言えるのは女性(に限らず老人とか女房とか同僚とかも含め)に対する面倒見の良さですね。匂宮は皇子であり立場が違うのかもしれませんが、それにしても余り面倒見がいいとは感じられません。性格的なものもあるのでしょうか。
ところで源氏、夕霧は相手に対し面倒見はいいが手に入れるべきものはしっかり手に入れています。そしてこまめに面倒を見ているということです。ところが薫は面倒を見るだけで何も手には入れていない。この点が読者が薫に歯がゆさを感じ、しっかりせんかい、、、と思うところでしょう。