p78-82
15.新年、阿闍梨、姫君たちに芹・蕨を贈る
〈p193 新しい年になりますと、〉
①K24年正月 年かはりぬれば、空のけしきうららかなるに、、
→正月は必ず「空のけしきはうららか」である。
②阿闍梨から正月のお祝いに芹、蕨が届けられる。
大宮 君がをる峰の蕨と見ましかば知られやせまし春のしるしも
中の君 雪ふかき汀の小芹誰がために摘みかはやさん親なしにして
→思い出づるは亡き父のこと。
16.匂宮、中の君と贈答する 匂宮、薫を恨む
〈p195 桜の花盛りの頃、匂宮は去年の春、〉
①2月桜の花盛り。匂宮よりの文
匂宮 つてに見し宿の桜をこの春はかすみへだてず折りてかざさむ
→「折りてかざす」女を我がものにする。露骨である。
→皇子故のゴーマンさ。源氏にもそんな所があった。
②中の君 いづくとかたづねて折らむ墨染にかすみこめたる宿の桜を
→中の君はまさか匂宮がわざわざ宇治までやって来ようとは思っていない。
③匂宮 vs 薫
早く何とかしてくれと迫る匂宮
落ち着きなさいといなす薫
→相変わらずの問答である。
④夕霧が六の君との結婚を匂宮に迫っている。
匂宮「ゆかしげなき仲らひなる中にも、大臣のことごとしくわづらわしくて、何ごとの紛れをも見とがめられんがむつかしき」
→匂宮は明石の中宮の三の宮、六の君は夕霧の六女(藤典侍腹)。即ち従兄妹同士。
→夕霧が若い世代には鬱陶しい存在になっていることが分かる。
匂宮「心にかなふあたりを、まだ見つけぬほどぞや」
→まだ心に適う女性が見つかってないから、、、
→匂宮はもう25才。源氏は色々あって須磨に蟄居しようかという年令である。
[今日は短すぎましたね]
阿闍梨から新年の挨拶に芹・蕨が贈られる。
若菜摘む春さえ姫君たちには疎ましい思いなのでしょうかね。
それほど父君の死の痛みが深いと言うことでしょう。
匂宮の贈歌にもなびかない中の君。
やはり皇女ゆえのプライドでしょうか?
喪中の姫君たちにとっては「恋」どころではないのかも・・・
かの夕霧も世代交代で若者から年寄り扱いの様子に歳月を感じます。
普段身近な存在である六の君にはときめかない、人里離れた宇治の姫への憧れが大きい・・・
人間の常かも知れません。
身近な者の良さに気付かなく遠くにある者に憧れる。
昔、口づさんだカール・ブッセの詩を思い出しました。
山のあなたの空遠く
幸住むと人のいふ
ああ われひとゝ尋めゆきて
涙さしぐみ かへりきぬ
山のあなたになほ遠く
幸住むと人のいふ
ありがとうございます。
1.匂宮と中の君との歌の贈答、面白いですね。
匂宮の歌は何ともストレート。匂宮の身分・立場とそれ故の性格が詠ませた露骨な?(「正直な」の方が妥当か)歌だと思います。
一方中の君の返歌は軽く切り返していますが、まさか天下の匂宮が自分に真剣に恋をしかけているとは思わなかったでしょう。半信半疑と言うより「こちらはそれどころじゃないのに、戯れはやめて欲しいわ」と煩わしく思っていたのではないでしょうか。
2.カール・ブッセが出てきましたか。山のあなた(宇治)に幸せを求める匂宮(&薫)、、、。なるほど面白いじゃないですか。