椎本(3・4) 薫、宇治を訪問 八の宮との最後の対面

p22-32
3.匂宮の執心 八の宮、姫君の将来を案ずる
 〈p149 何かと落ち着かなくて、〉

 ①宇治で近づいたがそれ以上の進展はなかった匂宮、帰京して文を送り続ける。
  いとすきたまへる親王なれば、、、
  →匂宮は好色の親王として知られている。悪い意味ではない。

 ②姫たちの年令が語られる。
  大君 25才 中の君 23才 結婚適齢期を過ぎている。
  八の宮(大厄)61才 (薫は中の君と同じ23才、匂宮24才)

 ③死期が近いのを自覚している八の宮は姫たちの将来をあれこれ思い悩む。
  見ゆるされぬべき際の人の、真心に後見きこえんなど思ひよりきこゆるあらば、知らず顔にてゆるしてむ、
  →相応の男で頼りがいある男なら結婚を許してもいい。
   薫を念頭においての言葉だろうが結婚させてもいいという気持ちは持っていた。

4.薫、八の宮から姫君たちの後見を託される
 〈p151 薫の君はその秋、〉

 ①K23年 秋の司召で薫は宰相中将に昇進
  心苦しうて過ぎたまひにけむいにしへざまの思ひやらるるに、罪軽くなりたまふばかり行ひもせまほしくなむ。
  →出生の秘密を知った薫、父柏木の生きざま・死にざまを考え続けたことであろう。

 ②薫、久しぶりに宇治を訪れる(2月に匂宮を迎えに行った時以来)

 ③待ち受けた八の宮、薫にあれこれ話をする。
  「亡からむ後、この君たちをさるべきもののたよりにもとぶらひ、思ひ棄てぬものに数まへたまへ」
  →娘たちの後見を依頼しているがはっきりと結婚してくれとは言ってない。

 ④薫の返答も「お約束したこと心変わりはいたしません」ということで「結婚します」とは言ってない。
  →これもあいまいだが「姫たちを薫に託する」「託されます」ということで両者は暗黙の了解に達していたと考えてよかろう。勿論結婚するとの意味である。

 ⑤「、、、、男はいとしも親の心を乱さずやあらむ。女は限りありて、いふかひなき方に思ひ棄つべきにも、なほいと心くるしかるべき
  →当時の一般的考え方であったのだろうか。朱雀院も女三の宮のことで言っていた気がする。

 ⑥薫は昨年8月月下で姫たちを垣間見たことを思い出し姫たちに琴を所望。
  恥ずかしがり一節で止めてしまう姫たち。
  →薫もそれ以上は食い下がらない。八の宮・姫たち・薫が一同に会し心を通わせるチャンスだったのに。

 ⑦八の宮 われ亡くて草の庵は荒れぬともこのひとことはかれじとぞ思ふ 代表歌
  薫 いかならむ世にかかれせむ長きよのちぎり結べる草の庵は

  →八の宮と薫の歌の贈答 
   「頼みましたよ」「任せてください」これではっきりしたと思うのだが、、、。

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2 Responses to 椎本(3・4) 薫、宇治を訪問 八の宮との最後の対面

  1. 青玉 のコメント:

    昨日の疑問の続きになりますが八の宮は適齢期を過ぎた娘二人の将来が心配ならばいっそのこと後見と共にこの際はっきりと大君を薫に託したいと申されればよろしいのに・・・
    父上の言葉があれば大君の気持ちも少しは変わるのでは?
    ましてわが身の死期を自覚しているならば尚更じゃないですか?

    2月から秋まで宇治を訪ねなかったのは随分間がありますね。
    さぞかし八の宮も薫を待っていたことでしょう。
    この場でしっかりと姫君のことを結婚も含めて話すべきでしたね。
    そもそも暗黙の了解というのが大和人独特で、以心伝心とは必ずしも良い結果になるとは限りません。

    薫もせっかくのチャンスなのに姫君に特別なことは何もしないし言わない、じれったい。
    ここで薫は一にも二にも押すべきです。
    恋を語る、宇治の静寂な舞台に不足はありません。
    「おのづから、かばかりならしそめつる残りは、世籠れるどちに譲りきこえてん」
    気を利かせられたのではないでしょうか?
    八の宮と薫の和歌
    お互い男同士の信頼を約しての和歌だと思います。
    さてさて続きはどうなります事やら?

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      薫の宇治山荘訪問が2月から7月まで5ケ月も間をおいているのはどうしてでしょうかね。然も2月は匂宮を迎えに行ったついでに山荘にお邪魔して大勢の随身ともども饗宴に与っただけで八の宮と仏道談義をしている訳でもないし姫たちと恋を語らい合っている訳でもないですからねぇ。

      薫が宇治で弁から衝撃的な話を聞かされたのが前年の10月。それ以来薫はその事で頭がいっぱい、心の整理もつかず仏道修行も手につかなかったのかも知れません(仏道修行には八の宮を訪ねるのが一番だった筈)。ましてや姫たちとの恋について考えるような余裕はなかったのかも知れません。私には柏木の遺書を読んだショックはそう簡単に癒せるものではなくしばらくは茫然自失だったのじゃないかと思えるのですが。

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