橋姫のまとめです。
1.和歌
89.橋姫の心を汲みて高瀬さす棹のしづくに袖ぞ濡れぬる
(薫) 大君に想いを
90.命あらばそれとも見まし人知れぬ岩根にとめし松の生ひすゑ
(柏木) 紙魚・黴、、衝撃の22年前
2.名場面
88.そのころ、世に数まへられたまはぬ古宮おはしけり。
(p164 宇治十帖の始まり)
89.内なる人、一人は柱にすこしゐ隠れて、琵琶を前に置きて、、
(p198 薫、月下に姫君をかいま見)
90.おし巻き合はせたる反故どもの、黴くさきを袋に縫ひ入れたる取りででて奉る
(p234 弁、薫に柏木の遺書を渡す)
[橋姫を終えてのブログ作成者の感想]
宇治十帖の初帖橋姫を終えました。いかがでしたか。
新しい物語が語りおこされ、その語り口も匂宮三帖に比べるとぐっと鮮明、登場人物も舞台も新鮮にセットされ読者はたちまちに宇治の世界に引き込まれていったのではないでしょうか。
第一に宇治の舞台、これがいいですねぇ。地理的な知識、地図を是非頭に入れていただきたいと思います。
第二は草深い里に生きる薄幸の姫たち。昔からの物語の王道ですね。誇り高く嗜み深い大君と華やかでかわいらしく快活な中の君。この取り合せもいいですね。
第三は出生の秘密を独りで背負って生きる源氏物語本編の忘れ形見、薫!
(薫の血筋と出生の経緯を辿ると本編全てがカバーされると思います)
以上が三要素でしょうか。
コメント欄も青黄の宮さんの復帰を得て益々賑やかになってきました。ありがたいことです。宇治十帖はウジウジした話ではありますがそれだけに色んな読み解きができると思います。「薫よ、行け!」とか「匂宮よ、ガンバレ!」とかドンドン気持ちをぶつけてください。私とのやり取りだけでなくどうぞ相互に議論を発展させていただけばと思います。
宇治十帖の始まりががいきなり衝撃的、ドラマティツクな展開で読者も引き込まれ魅了されてしまいました。
振り返れば確か涎を垂らしながら筍をかじっていたあの幼かった薫が今や恋する青年に成長、感慨深いです。
宇治という新たな舞台で美しい姉妹を巡り匂宮、薫の恋物語はどのように発展していくのか大いに興味があり気が揉めるところです。
続きを楽しみに待ちましょう。
ありがとうございます。
本編での薫のこと思い出させていただきました。
①五十日の祝儀で源氏が薫を抱く場面(国宝絵巻柏木三)柏木p270
源氏 誰が世にか種はまきしと人問はばいかが岩根の松はこたへむ
→皮肉たらたらで源氏の屈折した想いが表れています。
②ご指摘の涎を垂らしながら筍をかじってる場面 横笛p18
源氏 うきふしも忘れずながらくれ竹のこは棄てがたきものにぞありける
→やっと薫を可愛いと思えるようになった源氏
あの薫が主人公です。ありきたりで平凡なストーリーになる筈がありませんね。私は今後とも薫に感情移入して読んで行こうと思います。引き続きよろしくお願いします。
匂宮3帖と比べれば、橋姫が始まり物語の設定・展開も面白く、また文章も格調高くなり、〈15〉は一部難解で苦労させられましたが、それでも引き込まれるように一気に読めました。
学者・先生はじめ皆さん仰る通り、匂宮3帖はやはり異質のように思います。
以前、薫は出生の秘密を知るのでしょうかと書いた覚えがありますが、弁の登場によりドラマティックに知ることになりました。仏門への気持ちが強まると書かれていますが、恐らく恋心も強まり、果たしてどうなっていくのか、匂宮と姫君たちとの恋の展開ともどう絡まるのか、3角 4角関係にもなるのか、展開を知らない小生には、興味しんしんです。
歌では
あとたえて心すむとはなけれども世をうぢ山に宿をこそかれ
(八の宮)
山おろしにたへぬ木の葉の露よりもあやなくもろきわが涙か
(薫)
と、爺も挙げている
命あらばそれとも見まし人知れぬ岩根にとめし松の生ひすゑ
(柏木) 紙魚・黴、、衝撃の22年前
が印象に残りました。
ありがとうございます。
どっぷりと源氏に浸られているようで嬉しい限りです。私はもう何回も読んでいるリピーターですが実はストーリーも知らずやみくもにチャレンジした第一回目の時(仲間との講読会)の感動が一番です。読み進む度に興奮が昂じていったことを思い出します。どうぞその調子で読み進めて下さい。
ご指摘の仏門への思いと恋心がどう関わっていくか重要テーマだと思います。どうぞ気がついたことなんでもコメントして下さい。
(4月から近所の大学で学生に交じって万葉集の講義を受ける由。いいじゃないですか。古代史も含め是非勉強して下さい。万葉集を地理的に読み取るならこの本です。「万葉の旅」上中下(犬養孝・平凡社ライブラリー)参考書にどうぞ。オマケ:「もし僕らのことばがウイスキーであったら」読んでみます)
清々爺へ
コメントありがとうございます。
万葉の旅 早速購入してみます。
村上春樹のエッセイ本、絶対アイラ島のウイスキーガ飲みたくなり、飲んだら源氏物語のように忘れられなくなると思いますので、そのうち感想を教えて下さい。
先ずは読みました。飲みたくなりました。飲める機会があるといいのですが。。
清々爺へ
文学的ではなく歴史的な意味合いの質問ですが、解れば教えて下さい。
帖の題が橋姫とあり、宇治橋の守り神と書いてありますが、当時既に宇治橋はかかっていたのでしょうか。文中では、舟で川を渡る描写がありますが、風流心からあえて橋は使わなかったと言うことですか?
大したことではありませんが、気になったので。
宇治橋は646年に元興寺僧道登によって架橋されたとの記述があるものの頑丈な橋ではなくしばしば洪水で流失したりで当時(平安初期~源氏物語執筆時)は架けられていなかったようです。源氏物語でも「宇治橋を渡った」との記述はありません。平安後期になると架橋状態が通常だったとのことです。
橋を使えばすぐの所なんで「あったのにあえて使わなかった」のではないようです。そりゃあ舟ですよね。だからこその浮舟ですから。
宇治橋のこと間違っていました。
宿木48.p232 に 「橋より今渡り来る見ゆ」 とあり、浮舟一行が宇治橋を渡って来たと書かれています。
あったのですね。訂正します。ごめんなさい。
→なかった方がよかったのに、、、。
早速の解説ありがとうございます。事態がよく理解できました。
20年前の薫の出生の秘密が、京の隠れ里・宇治に住まう
高貴な薄幸の姫との出会いの過程で明らかになる、
という筋立ては、本当に上手く繋げたものだと感心します。
実は、源氏物語の後半(?)が「何故、舞台が宇治なの?!」と、
常々(?)怪訝に思っていました。
余談 : 京都の人間にとって近郊地名は独自の
意味合いがあります(or ありました)。
例えば、「岩倉」と言えば精神病院があった
ことから、頭のおかしい人を指し、
「橋本」と言えば第16師団目当ての遊郭が
あった所で、いかがわしい場所を指します。
その例で言うと、「宇治」は、少年鑑別所が
あったので、子供が悪さしたら放り込まれる場所を
意味しました。つまり、あんまり好い土地とは
言えないのです。
でも、この『橋姫』の帖を読み清々爺さんらのコメントを
見させて頂き、「この話の流れでは、舞台は宇治しかない」、と
納得。実に上手い舞台設定で式部の土地感覚に感心しました。
いずれにしろ、配役が出揃いました。
この後の、展開が楽しみです。
「橋本」と言えば第16師団・・・
昨夏96歳で亡くなった父は昔、京都第16師団通信隊に所属していたそうです。
ですからモールス信号にも詳しかったです。
確か師団長は石原莞爾?だったとか・・・
「橋姫」とは全く関係ない話でごめんなさい。
ちょっと父を思い出したものですから。
先日久しぶりに京都へ行きました。
新緑の京都は素晴らしいと実感しました。
葵祭りも終わりましたね。
京都人ならではの貴重なコメント、ありがとうございます。
地名は独特の意味合いを持ちますよね。全国レベルで言えば「網走」は吹雪、暗黒の刑務所ですもんね。京都近郊のことよく分かりました。
宇治は少年鑑別所でしたか。私の宇治のリマークの中にも一行付け加えておきます。
薫と姫たちの物語、どうぞ楽しみに読み進めて下さい。