p192 – 202
27.宮、夕霧の待ち構えている一条宮に帰る
〈p218 一条の宮邸に御到着になりますと、〉
①おはしまし着きたれば、殿の内悲しげもなく、人気多くてあらぬさまなり。
→一条邸では従者・女房たちが引越しの興奮で色めきたっている。
→柏木に替る新しい主人(夕霧)を迎えてまた華やかな生活が始まる。女房たちには喜ばしい。
②殿は東の対の南面をわが御方に仮にしつらひて、住みつき顔におはす。
→夕霧もなかなかやるもんです。段々と度胸が据わってきている感じ。
③年経にけることを、音なく気色も漏らさで過ぐしたまうけるなりとのみ思ひなして、かく女の御心ゆるいたまはぬと思ひよる人もなし。
→女房たちも従者たちも周りは誰もが二人は既にできている、宮も承知していると思っている。
→皆が思っていることが事実となってしまう。宮が抗っても誰も同情しない。
④外堀内堀すべて埋め準備万端、夕霧は小少将に宮との逢瀬を整えろと迫る。
小少将 「こしらへきこゆるをもつらしとのみ思されたれば、何ごとも身のためこそはべれ、いとわづらはしう聞こえさせにくくなむ」
→ご主人(宮)を怒らせてお払い箱になっては困りますので、、何とも正直である。
28.夕霧、落葉の宮に迫る 宮塗籠にこもる
〈p221 小少将の君はこんなに強情に言い張りますけれど、〉
①夕霧→小少将 うるさい、だまれ!とっとと宮の所へ案内しろ!
②女二の宮、塗籠に逃げる。
→塗籠、紫式部は好きですねぇ。藤壷・女二の宮、そして今後も塗籠は出て来ます。
③よろづに思ひ明かしたまふ。山鳥の心地ぞしたまうける。
百人一首 No.3 柿本人麻呂
あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜とひとりかもねむ
→夕霧も辛抱強い。普通の男なら焦って壁を蹴破るところかもしれない。
29.夕霧六条院にいたり、花散里・源氏と対面
〈p223 夕霧の大将は、六条の院にいらっしゃって、〉
①夕霧、一条邸から六条院へ
→一条邸、六条院、三条邸と京の町を行き来。夕霧も忙しい。
(愛人藤典侍がどこに居たのか不明だが)
②先ず花散里と対面
さすが母親がわりの花散里、夕霧の話をじっくり聞いて理解を示す。
三条の姫君の思さむことこそいとほしけれ。のどやかにならひたまうて。
→ただ北の方雲居雁について釘をさすことは忘れない。
③夕霧は六条院での女方の心の持ち方、紫の上の心遣い・花散里の穏やかな心持をほめる。
→女二の宮に尋常ならざる恋をして夕霧も成長したのではなかろうか。
④次いで源氏と対面
源氏の心内
一条邸に宮を戻し妻としたようだが、さすが私の息子、男盛りのいい男だ、女ならだれでも拒みはしないだろう、、、、
→脚注には父親の甘さとあるが、とりもなおさず自分自身の美貌・名声への驕りではなかろうか。
女二の宮すっかり様変わりした一条邸に驚きの様子・・・
夕霧すでに主人顔、なかなかやりますが強引ですね。
夕霧「いとまた知らぬ世かな。憎くめざましと、人よりけに思しおとすらん見こそいみじけれ。いかで人にもことわらせむ」
以下、小少将との会話は傑作ですね~
お坊ちゃま真面目夕霧、小少将の皮肉にも気付かない。笑えます。
女二の宮、それでも夕霧を受け入れない、どちらも強情です。
ながながし夜をひとりかもねむ
夕霧、ひとり寝の夜はさぞかしせつなくながい夜だったことでしょう。
そしていつものごとく先ずは花散る里の東の上へ・・・
穏やかな花散里は夕霧にとって素直になれる居場所なのでしょうね。
結構打ち解けて虚実ないまぜに言いたいことを話していますね。
おっとりと夕霧の話に耳を傾け三条の姫君を思いやる花散里の母親代わりらしい姿が想像できます。
花散里に本当の親子のように雲居雁や父院への不満などを訴える夕霧の姿は母に甘えているようで微笑ましく感じます。
父、源氏の感違いも自己満足が見えてそれぞれのちぐはぐがおもしろい場面です。
ありがとうございます。
女二の宮には気の毒ですが、一条宮に連れて来られた以上もう情況は変えられません。「早く連れて来てやらせろ」と言わんばかり性急に迫る夕霧に小少将は「まあまあ、もうちょっとお待ちください」となだめるのが精一杯。おっしゃる通り会話のやり取りは喜劇調ですね。それだけに未だに心を開かない女二の宮が気の毒でもあるし、いい加減観念したらという感じもします。
→夕霧フアンの私は「あんなに熱心な殿方に言い寄られて何が不足なんですか。身も心も預けて夕霧の意向に添うことが貴女の幸せになるのだと思いますよ」と言ってあげたいのですが、、、。人の心は複雑ですね。
寝殿造りの構造では隠れられそうなのは塗籠だけでしょうが、そこにも入口はあり、女房たちが夕霧の味方ではもう逃れられませんね。
御帳台での交じらいより塗籠でのそれのほうがより読者にとって効果的だと、紫式部は考えてあちこちで使用したのでしょうかね。
女二宮もこうなったら現実を見極めて、前を向いてほしいですね。
宮様といえども女のほんとうの強さを見せてほしものです。
ありがとうございます。
なるほど性愛場面に塗籠を多用するのは紫式部の読者サービスですか。日常の寝室ではない非日常の場所という観点ですね。でも入口があって(なければ入れませんが)鍵を持っている女房がいれば意味をなしませんからねぇ。か弱き女性が襲い来る男から逃げ込むにはそこしかないのでしょうが。塗籠を挟んで夕霧も女二の宮もどうするのがいいのか思案して欲しいものですね。