鈴虫(6・7) 中秋の遊宴 (六条院→冷泉院へ)

p66 – 74
6.中秋十五夜の遊宴 冷泉院より御使あり
 〈p117 十五夜の月がまだ姿を見せない夕暮に、〉

 ①G50年中秋の名月 秋の風情にした女三の宮寝殿の前にて遊宴

 ②松虫と鈴虫
  源氏物語中の松虫=今の鈴虫、リーンリーン 
  源氏物語中の鈴虫=今の松虫、チンチロリン
  →youtubeで鳴き声聴いてみたがよく分からない。
  →リーンリーンの方が風情があると思うのだが。

 ③女三の宮 おほかたの秋をばうしと知りにしをふり棄てがたき鈴虫の声
  源氏 心もて草のやどりをいとへどもなほ鈴虫の声ぞふりせぬ 代表歌
  →女三の宮の歌は素直でいいのでは。源氏の返歌は未練がましい気がする。

 ④ここにきて朝顔、朧月夜、女三の宮と相次いで出家
  世の中さまざまにつけてはかなく移り変るありさまも思しつづけられて、
  →源氏としては取り残された寂しい気持ちをぬぐえないのであろう。

 ⑤宮中での名月の遊宴は中止(理由不明)、六条院に例によって蛍宮などが集まってくる。
  虫の音の定めをしたまふ
  →虫の音の優劣論、虫合とでもいうべきであろうか。

 ⑥遊宴、楽宴となるといつも主役であった衛門督(柏木)のことが偲ばれる。
  →柏木追悼の月下の宴というべきか。

 ⑦ここで紫式部の祖父藤原雅正の歌が二首引かれる。
  いつとても月見ぬ秋はなきものをわきて今宵のめづらしきかな
  花鳥の色をも音をもいたづらにものうかる身はすぐすのみなり
  →官位には恵まれなかったが後撰集に七首選ばれている。式部は一気に二首引用した。

 ⑧冷泉院からお声がかかる。
  冷泉院 雲の上をかけはなれたる住みかにももの忘れせぬ秋の夜の月
  源氏 月かげはおなじ雲居に見えながらわが宿からの秋ぞかはれる
  →歌で催促が来て歌を返して参上する。のんびりしている。

7.源氏、冷泉院へ参上 詩歌の御遊びあり
 〈p123 冷泉院にいらっしゃる人々のお車を、〉

 ①冷泉院からのお誘いを受け大騒ぎしながら仙洞御所(冷泉院=現二条城の所)に赴く。

 ②冷泉院 いたう驚き待ち喜びきこえたまふ。ねびととのひたまへる御容貌、いよいよ異ものならず。
  →源氏50才、冷泉院32才。名乗りすることのできない父子交流が切ない。

 ③管弦の宴、詩歌の宴 詳細は省筆されている。
  国宝 源氏物語絵巻(鈴虫二)はこの場面

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3 Responses to 鈴虫(6・7) 中秋の遊宴 (六条院→冷泉院へ)

  1. 青玉 のコメント:

    鈴虫と松虫 今とは逆なんですか?ややこしいですね~

    十五夜に虫の声 琴の音いかにも風情があります。
    琴の音と言えばやはり女楽の際に宮に手を取り教えられた日々が思い出されます。

    女君たちが次々出家しさすがの源氏も
    世の中さまざまにつけてはかなく移り変るありさまも思しつづけられて、例よりもあはれなる音に掻き鳴らしたまふ
    わかりますね~

    虫合 おもしろいですね。秋の虫の饗宴、あってもいいですよね。

    柏木を偲ぶ源氏の思いに紫式部は祖父の和歌を引用したのですか。
    心憎いですね~
    ここのところは清々爺さんの解説と脚注がなければ見逃すところでした。

    久しぶりに冷泉院、まだ32歳 早すぎる譲位でしたね。
    物語への登場が少ないのは少し物足りないです。
    御子もいらっしゃらないのですよね?

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      1.これまで出て来た虫を整理しておきます。多くもなく少なくもなくでしょうか。
        ①蛍 源氏が蛍を放ち玉鬘の姿を照らし出す場面(蛍3)
            中川の紀伊守邸、「蛍しげく飛びまどひて、、」(帚木14)

        ②蝉 空蝉の身をかへてける木のもとになほ人がらのなつかしきかな(空蝉5)
            「蝉の声などもいと苦しげに聞こゆれば、、、」(常夏1)

        ③蜩 夕露に袖ぬらせとやひぐらしの鳴くを聞く聞く起きて行くらん(若菜下30)
             (女三の宮が源氏をひきとめた重要な歌)

        ④きりぎりす(今のコオロギ) 壁の中のきりぎりすだに間遠に(夕顔10)
              (手狭な五条の夕顔の家の様子)
       
        ⑤鈴虫・松虫 本段です

        ⑥蝶 花ぞののこてふをさへや下草に秋まつむしはうとく見るらむ(胡蝶2)
             (蝶々そのものが出てくるわけではないものの)

        ⑦そして 蜻蛉 宇治十帖です。 

      2.冷泉院を登場させる。これも面白いと思いました。昨日のコメントで今上帝・朱雀院・源氏は常に意識されてると書きましたが、冷泉院は作者にも読者にも忘れられがちですね。子どももいないしちょっと存在感がありません。不義の子冷泉院をこれ以上活躍させるのは憚られたということでしょうか。
        
       →冷泉院での中秋の楽宴で源氏と冷泉院が向かい合っている場面が国宝源氏物語絵巻に捉えられているのはさすがだと思います。

    • 清々爺 のコメント:

      松虫で一つ大事な場面の歌を忘れていました。

      賢木、野宮の別れの場面です。

       はるけき野辺を分けて入りたまふよりいとものあはれなり。秋の花みなおとろへつつ、浅茅が原もかれがれなる虫の音に、松風すごく吹きあはせて、、、、、

       、、、、風いと冷やかに吹きて、松虫の鳴きからしたる声も、をり知り顔なるを、、

       (御息所)おほかたの秋の別れもかなしきに鳴く音な添へそ野辺の松虫

      この場面では松虫(リーンリーン)が合ってるように思います。

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