p156 – 166
28.明石の入道入山、最後の消息を都におくる
〈p117 あの明石の入道も、〉
①明石の女御が若宮を無事出産したとの報が明石の入道に届く。それを聞き遂げての明石の入道のリアクションが語られる。名場面だと思います。
②入道の願いは娘明石の君が貴人と結婚しその娘が入内して男子(後の天皇)を産むこと。正しく今このウルトラ願望が成し遂げられた! もう思い残すことはない、、、とて深山に入る(二度と里に戻らない)。
③入道の長文が紹介される。源氏物語中一番長い手紙ではなかろうか。
入道の願いの経緯が語られる。
明石の君が生まれる年の二月に見た夢、、、これが実現したことになる。
わがおもと生まれたまはむとせしその年の二月のその夜の夢に見しやう、みづから須弥の山を右の手に捧げたり、山の左右より、月日の光さやかにさし出でて、世を照らす、、、、、、、、
→明石物語の原点の謎解きとも言えようか。入道の種明かしである。
④入道の辞世の歌
ひかり出でん暁ちかくなりにけり今ぞ見し世の夢がたりする
かの社に立て集めたる願文どもを、大きなる沈の文箱に封じ籠めて奉りたまへり
→住吉神社への願文。これを残しておき執念深く願いを追及するところがすごい。
⑤入道より愛する尼君への短い手紙が切ない。
かひなき身をば、熊、狼にも施しはべりなむ。そこにはなほ思ひしやうなる御世を待ち出でたまへ。明らかなる所にて、また対面はありなむ。
⑥入道、世を捨てるにあたって重要物(琴の御琴・琵琶など)は寺に施入し他は関係者に分け与え財産をきれいさっぱり処分する。
→入道の清廉潔白さ(尤も財をなすには多少の荒っぽいことはあったであろうが)
⑦明石の入道について(G41年のこの時年令は75才)
・父は大臣(桐壷更衣の父按察大納言の兄弟)。従って明石の入道と桐壷更衣は「いとこ」
・即ち源氏と明石の方は「はとこ」or「またいとこ」
・近衛中将まで昇ったが何やらあって播磨守になり明石の地で出家
・G9年明石の君生まれるとき(32年前)夢を見て住吉神社へ願いを掛ける。
・G27年源氏明石へ。明石の君と契る。
・G29年明石の姫君誕生
・G31年明石の尼君・明石の方・明石の姫君大堰に移る(入道にとっては永久の別れ)。
・G31年明石の姫君、六条院へ移る。
・G39年明石の姫君入内
・G41年明石の姫君、若宮を出産
→実に波乱万丈の一生ではないでしょうか。
引き続き明石一族の長、入道の登場。
宿願果たしこの世に思い残すことのない覚悟が見えてきます。
自らの意思とは言え入道の大きな犠牲無くしてこの大願の成就はあり得なかったでしょう。
大いなる男の深い愛を感じます。
式部さんではないけれど私も入道が大好きになりました。
娘に託す大きな期待と愛がせつなく又妻への手紙に何度も涙で文字がかすみました。
私ごとですが恐れ多くも入道の姿と、我が亡き父の姿が重なり朝から涙があふれてとまりません。
注釈にもあるようにやはり「骨肉の情」ですかね。
源氏物語の中には高貴な方々を含め、いろいろ才能豊かで美男で家柄もよさそうな男たちが溢れていますが、なんといっても私が一番好きなのは明石入道です。心の奥にじーんとくるものがあります。
青玉さんが明石入道好きになってくれて、心強いです。ファンクラブ作りたいですね。
人が何に強く心惹かれるか? 「無私」ではないかと思います。 私自身は我儘なのでよけいにそう感じるのかもしれません。
この段は何度読んでも「いいなあ」と思います。人間の良き本質部分に触れたような気がします。
青玉さん、式部さん、明石の入道への応援コメントありがとうございます。
光源氏というスーパーヒーローもさることながら明石の入道のような好ましき個性的人物を作り出したのもアッパレと言う他ありません。入道を主人公とした小説やら映画やらがあってもいいかと思います。
考えてみるに私にはこの明石の入道の真似は絶対にできません。
・中将まで昇っていながら地方受領に転身する→私なら宮中にしがみついています。
・播磨守として財をなす→相当貯めこんだのでしょう。
・娘を得て大願をかける→途方もない夢物語。普通なら犠牲の方が大きい。
・妻・娘・孫を都にやり独り明石に留まる→家族と共にあっての人生だと思うのだが、、。
・大願成就して山に入る→折角願いが叶ったのに。大手を振って都に上ればいいのに。
偏屈・依怙地・頑固一徹・剛腹・硬骨・頑強、、、(類語辞典から引っ張りました) 昔の親父像の最たるものでしょうか。今のマイホームパパからは思いもつきません。