p214 – 223
9.兵部卿宮、昔の仮名の手本を源氏に贈る
〈p279 今日はまた、書のことを終日あれこれと〉
①兵部卿宮との書道論の続き。
→脚注にある通り作者の現代文明論
②嵯峨帝の万葉集-これは漢字(万葉仮名)だろうか。
三筆=嵯峨帝・空海・橘逸勢 唐風漢字の能書家
③延喜帝(醍醐天皇)の書かせた古今和歌集-これは平仮名だろう。
④兵部卿宮所蔵の逸品を明石の姫君の入内用として源氏に差し出す。
10.源氏、姫君の草子の箱に収める書を選ぶ
〈p281 源氏の君は、またこの節は、〉
①草子の箱に何を入れるか。身分の低い者が書いた書、身分が高くても上手でないものは入れない。
→身分は低いが上手な書は源氏が然るべく処遇したのだろうか。
②源氏の切り札須磨の絵日記は入れない。
→須磨に蟄居し明石に移って姫が生まれたとは知られたくない。当然の気配りだろう。
11.夕霧と雲居雁-内大臣の悩み 源氏の訓戒
〈p281 内大臣は、こうした明石の姫君の〉
①明石の姫君入内のことを聞き内大臣は雲居雁のことを不憫に思う。
→折角玉鬘裳着の儀のことで源氏と和解し夕霧・雲居雁問題も解決できたのに、チャンスを逃し未だにあれこれ悩んでいる。
②あさみどり聞こえごちし御乳母どもに、納言に昇りて見えんの御心深かるべし。
→夕霧もしつこく執念深い。あっさり許せないものだろうか。
③右大臣、中務宮よりの縁談の話が持ち出される。
→いかにもありそうな話。ある意味逆療法とも言えようか。
④「かやうのことは、かしこき御教へにだに従ふべくもおぼえざりしかば、、、、、中略、、、、、わがため、人のため、つひにはよかるべき心ぞ、深うあるべき」
→父源氏が息子夕霧に語る夫婦論・女性論。豊かな経験に基く正論である。
→朧月夜との密会がばれて須磨に蟄居したこと夕霧は知っていたのだろうか。
→母葵の上のこと、今母親として面倒をみてもらっている花散里のことも含まれている。
12.噂を聞き、内大臣、雲居雁を悲しむ
〈p285 夕霧の中将は、思いあまる折々に、〉
①夕霧の他の縁談の話が内大臣の耳に入り、内大臣は悩み雲居雁にも打ち明ける。
→そんなこと言われても雲居雁はどうしようもないでしょうに。
→どこまでもウジウジして情けない内大臣です。もっとしっかりしなさいよ!
②夕霧と雲居雁の歌の贈答
夕霧 つれなさはうき世のつねになりゆくを忘れぬ人や人にことなる
雲居雁 かぎりとて忘れがたきを忘るるもこや世になびく心なるらむ
→誤解が誤解を生み思わぬ展開に、、、、平安時代のコミュニケーションの難しさの典型ならん。(この場合は大事には至らないものの)
③何故大宮の生前に懸案が解決し大宮を喜ばすことができなかったのか。
→意地の張り合いにも限度があろう。大宮が可哀そう。
そして第一部最終巻の藤裏葉へと続きます。
源氏と兵部卿宮の対話、まことに風流極まりないです。
姫君入内の為に細心の心遣い、すべて超一級最高の物をと準備は完璧なようですね。
夕霧、いまだ雲居雁との間は進展しないのですね。
何ということでしょう、別れてから何年になるのかしら、雲居雁も最早20歳。
若い二人にとってこれは過酷です。
内大臣も意地っ張りですね。一旦こじれると誤解の連鎖です。
自身の面子と意地だけでここまで来てしまったとは・・・
夕霧にとっては六位ふぜいと笑われたのがよほど屈辱だったのでしょうね。
ここはお互い素直な気持ちで和解すべきでしょう。
でもここにきてようやく内大臣の焦りと軟化の気持ちが見えてきて物語の進展をうかがわせますね。
大宮もさぞやあの世でお嘆きでしょうに。
春風をたよりにのせて香る花
奏の音華やぐ月下の宴
ありがとうございます。
1.「誤解の連鎖」、正におっしゃる通りだと思います。人の心のちょっとした擦れ違いが疑心暗鬼を生み出し中々元に戻れない。人生ドラマは全てこの繰り返しかもしれません。内大臣も夕霧もいい加減素直になって欲しいものです。
2.梅枝の歌ありがとうございます。薫物合せの夜の梅の宴、巻名を見事に詠みくだいていただいていると思います。この巻は「香りの巻」ですもんね。