六条御息所との関わりで重要場面です。
p238 – 251
12.源氏、帰京した六条御息所の病を見舞う
〈p205 そういえば、あの伊勢の斎宮も〉
①伊勢に居た六条御息所&斎宮、朱雀帝の譲位に伴い帰京している。
伊勢へ行ったのがG23年9月(野宮の別れ)、今がG29年。6年経っている。
六条御息所は36才、斎宮は20才(女盛り)になっている。
②源氏も御息所を愛人とする気持ちは消えている。でもそれなりの付き合いはしようと思っている。それよりも「娘前斎宮はいい女になったろうな、、、」なんて思っている。
③御息所重病に、そして出家(源氏に何も相談もせずに)。
伊勢で斎宮として神に仕えるということは仏からは遠ざかることになる(罪深いこと)。
④源氏が見舞いに行っての御息所との会話→重要
御息所がこれだけ多くを語るのは物語中ここだけか。母一人、娘一人御息所には娘のことが余程心配であったのだろう。頼めるのは源氏だけ、でも愛人とされてはたまらない。そこで必死の遺言となります(この遺言が物語の筋を作っていくことになる)。
うたてある思ひやりごとなれど、かけてさやうの世づいたる筋に思しよるな。うき身をつみはべるにも、女は思ひの外にてもの思ひを添ふるものになめはべりければ、いかでさる方をもて離れて見たてまつらむと思うたまふる
⑤これに対し源氏は御息所を哀れとは思うものの気持ちは娘前斎宮の方に傾いていたのではなかろうか。御息所はそれが分かるからこそ上記の遺言となったのでしょう。
→この御息所の遺言は娘に対する嫉妬心も含まれているとの説もあるがいかがなものでしょう。
13.六条御息所死去 源氏、前斎宮を慰める
〈p211 御息所はそれから七、八日後にお亡くなりになりました。〉
①御息所あっけなく亡くなる(享年36才)。でも死霊は今後も登場する。
②源氏と娘前斎宮との歌の贈答
源氏 降りみだれひまなき空に亡きひとの天かけるらむ宿ぞかなしき 代表歌
前斎宮もなかなかの貴夫人
わりなくもの恥ぢをしたまふ奥まりたる人ざまにて、
源氏は前斎宮を冷泉帝に入内させようと方針をたてる。
→すごい切り札になっていきます。
死期の迫った御息所にとって唯一心残りは娘の前斎宮のこと。
美しく成長した娘を前に御息所は源氏の内心を易々と読めたでしょう。
遺言として娘の事を頼る一方で釘をさす。
母親として当然のことで私は嫉妬心ではないと思いますが・・・
御息所を偲んだ源氏と前斎宮の歌、いいですね。
前斎宮 消えがてにふるぞ悲しきかきくらしわが身それとも思ほえぬ世に
母を失くした哀しみが伝わります。
源氏の複雑な思いも見え隠れする所です。
そこで帝に入内させようという妙案に至る、これはひらめき?それとも計画的?
ありがとうございます。
1.六条御息所の必死の遺言、この部分何度読み返しても真に迫っててすごいなあと思います。内心を見透かされた源氏はタジタジとして「わ、わかってますよ、、私ももうそんな年でもありませんし、、、」と答えるのが精いっぱい。勝負ありですね。これ以降多少心は動くものの自制心の方が勝っていきます。→当たり前でしょうが。
2.娘の幸せを願いひたすら源氏の後見を頼む御息所、私も嫉妬心はなかったと思います。でも御息所も娘前斎宮が自分の果たせなかった中宮にまで昇りつめるとは思っていなかったでしょうね。すごい運命です。
3.娘前斎宮を参内させ冷泉帝の后にする。実に巧みな筋書きです。源氏はいつそれを思いついたのか、面白い論点だと思います。御息所が亡くなって、後見を託されさりとて妻にすることには釘をさされ、さてどうするか、、、「そうだ、年はチトいってるけど冷泉帝に上げよう」、、、とこの時点で思いついたのではないでしょうか。それにしても御息所が亡くなるタイミングが絶妙ですね。生きていれば娘を源氏に頼むこともなかった、娘は母とともにずっと未婚で通したってことかもしれませんものね。