「明石」わりなくもわかれがたしとしら玉の涙をながす琴のいとかな(与謝野晶子)
さて明石の巻、「明石物語」の始まりです。不思議な運命の物語です。須磨に落ちてきて丁度一年、舞台が明石に移り暗かったストーリーがぐっと明るくなる。暗から明へ、だから「あかし」なんだとも言われています。明石一族にはフアンが多いですね。式部さんは「明石の入道」大好きだし、青玉さんは「明石の君」だとおっしゃってましたね。私はいつも冷静で幸せをつかむ「明石の尼君」にあやかりたいと思っています。では、早速まいりましょう。
p106 – 112
1.風雨やまず、京より紫の上の使者来る
〈寂聴訳巻三 p94 相変わらず雨風は止みません。〉
①G27年3月 春の嵐、須磨の巻末から続いている。
②二条院の紫の上からの使い(見舞い)。紫の上の心配いかばかりだったろうか。嵐の中を使いがたどりつく。源氏も嬉しかったことだろう。
③使い(賎の男)を傍に寄せて生の声を聞く源氏。源氏なき京で朝廷人もあわてふためいている様が語られる。生の声だけに迫力あったことだろう。
④雷が鳴り「ひ」(氷=雹)が降っている。珍しい現象をよくとらえている。(雹が出てくるのはこの場面だけ)
2.暴風雨つのり、高潮襲来、廊屋に落雷
〈p97 こうした天候のつづくうちに、〉
①春の嵐が続く。家来たちも源氏もそれぞれに神仏に必死に無事を祈る。
明石物語を導くキィとなる住吉神社が登場する。
②供人の祈りが括弧書きで載せられているが、妻子を京に残し源氏に付いてきた供人たち、いつか京に帰れることを夢見て尽くしているのに嵐で危うい状況に陥る。「ちょっと待ってくれ~」と叫びたくなるのも当然でしょう。
③「帝王の深き宮に養はれたまひて、いろいろの楽しみに驕りたまひしかど、」
供人の言葉が面白い。「源氏の君は色々享楽にうつつをぬかしゴーマンなところもおありになりますが、、、、」神の前では正直に告白する他ない。
④落雷して火事になる。リアルな描写ですね。源氏物語中一番のスペクタクル場面で映画なら盛り上がるところでしょうね。
暴風雨に落雷、源氏はじめ供人は腰を抜かさんばかりの驚きだったでしょう。
この自然現象が清々爺さんもおっしゃるように暗から明への転換点として効果的に物語を運ぶ役割をしていますね。
須磨から明石、ひなびた海辺から名前の如く明るい海辺へと源氏の今後を示唆するようなイメージを与えてくれます。
又明石ファミリーもやはり源氏の吉兆をほのめかしているようです。
期待できますね~
ありがとうございます。
須磨は摂津(畿内)、明石は播磨(畿外)と言うのはいいのですが、須磨は摂津の最西端、明石は播磨の最東端で隣合せなんですね。この辺りは瀬戸内航路の泊りとして重要であったとのこと。
取分け明石(魚住)は難関明石海峡の泊りで万葉集にも多数詠まれています。犬養孝「万葉の旅」を見てみました。柿本人麻呂の歌が多い。
燈火の明石大門に入らむ日や 漕ぎ別れなむ家のあたり見ず
天ざかる鄙の長道ゆ恋ひ来れば 明石の門より大和島見ゆ
ところで播磨守ってどこにいたのか。播磨の国府は姫路にあったというから姫路でしょうかね。少なくとも最西端の明石ではなかったのでしょう。そんな明石を舞台に持ってきた紫式部。WHY須磨?は分かるのですがWHY明石?なんでしょう。まあ須磨に一番近いかっこうな所ということでしょうかね。