さて、物語中でも屈指の名場面の登場です。式部さんの朗読を是非お聞きください。
p16 – 28
3.ある供人、明石の入道父娘のことを語る
〈p243 源氏の君は寺にお帰りになり、〉
①北山から京を見下ろす源氏。供人が世間知らずの源氏に日本地理を教育している。
富士山と浅間山(なにがしの岳)。浅間山は伊勢物語の東下り出てくる。有名な山だったのだろう。
②良清の登場。父は播磨守だから明石出身か。明石物語を導く男。惟光と並ぶ源氏の傍臣。
③明石入道の経歴と現在の生活ぶり(明石で財をなして裕福に暮らすとともに野心もありまた出家して仏心もあり)その娘(明石の君)の説明。母こそゆゑあるべけれ とあり、明石の君の知的バックグラウンドが示唆される。
→後の主要テーマ明石物語への伏線(ちょっと唐突な感じ)
④娘のことを問い質しキチンとインプットする源氏。この辺が好色男子の面目躍如か。
4.源氏、紫の上を見いだして恋慕する
〈p248 春の日はたいそう長くて所在ないので、〉
①「北山の垣間見」と呼ばれる有名場面です。古文の受験問題にもよく引かれるらしい。
②お伴は惟光ただ一人。尼君は40才余、紫の上は10才とあるからこの尼君は30才余でお祖母ちゃんになったことになる。
③紫の上の颯爽たる登場。この件、表現すばらしいと思います。
中に、十ばかりやあらむと見えて、白き衣、山吹などの萎えたる着て走り来たる女子、、、、、髪は扇をひろげたるやうにゆらゆらとして、顔はいと赤くすりなして立てり。
これが源氏が生涯のベストハーフとした紫の上の描写です(紫の上=10才から43才で亡くなるまで34年間連れ添う。勿論物語中の女君で一番長い)。読者のイメージはこの描写で決まったことでしょう。
④「雀の子を犬君が逃がしつる、伏籠の中に籠めたりつるものを」
大河ドラマ平清盛で何度も出てきましたね。ちょっと無理やり関係づけてる感じでしたけど。。
紫の上の名言、これからも出てきますがやはりこれが一番記憶に残るでしょう。無邪気でいいですね。
[全くの余談] 最初読んだ時、犬が飛び出して来て雀を逃がしたのかと思いました。源氏物語で犬はほとんど出て来ない。宇治十帖で番犬的にちょっと出てくるだけ。猫は重要なお役目で第二部の最初に出てきますけどね。
⑤尼君と少納言の乳母との会話で紫の上の生い立ち、これからの境遇を源氏が知るところとなる。
それにしても藤壷に容貌が似ている。「よし、この女性を自分のものにしよう」と心に決めたということです。
後に紫の上をおびやかす存在になる明石の君の伏線がここで初めて触れられるわけですね。
家臣(良清)も何だか源氏の好き心を挑発してるように見受けられます。
尼君、ただ人と見えず・・・源氏の観察もなかなか鋭いですね。
清々爺さん、進乃君さんも指摘されているように紫の上の描写は絵に描いたように素晴らしい表現です。
読者はそれぞれに愛らしく無邪気なイメージをはっきりと想像することでしょう。
それにしても源氏の反応は一々多情ですね。
明石の父娘に心をとめたと思えばもう次は紫の上ですもの。
ありがとうございます。
3.で唐突に明石入道父娘のことが語られこれが後の明石物語の伏線になるのですが、それは結果論的なものなのでこの部分は余り深く考えずにサラッと通り過ぎることでいいかと思います。京内から殆ど出たことがない源氏が随身の説明から地方のことやら、受領のことやらを学び見聞を広めた、、、くらいに考えておきましょうか。
紫式部は娘(大弐三位)を育てた経験があるのであどけない少女の表現がうまいと言われていますね。勿論この幼き紫の上が一番ですが、後の明石の君の産んだ明石の姫君の描写も泣かせます。
若紫の颯爽たる登場、式部さんの朗読を参考に声を出して読んでみました。気持ちいいですね。