夕顔(7) 六条御息所を訪問

p208 – 211
7.秋、源氏、六条御息所の御方を訪れる
 〈p168 いつしか秋になりました。〉

 この段は解説書にも必ず登場する重要な場面

 ①葵の上のところには殆ど帰らない → 帰宅拒否症候群
 ②六条御息所との馴れ初め・経緯が簡単に語られる。
  六条御息所 24才 vs 源氏 17才
  「いとものをあまりなるまで思ししめたる御心ざまにて」
  御息所の性格の叙述、しばしば出てくる

 ③霧のいと深き朝~~~  ここからが名場面
  御頭もたげて見出だしたまへり
  この所、解説書ではこぞって「前夜の源氏との激しい交歓で御息所はぐったりして起き上がれず、頭だけ出して見送った」などと書かれているが、いかがなものだろうか。そこまで思わなくてもいいのではないか。

 ④中将のおもと、この女房とのやりとりが面白い。いい女を見かければただではすまさない、すぐ高欄に座らせて手など握ってしまう。まめ男、好色男の面目躍如といったところか。この女房、衣装も立居振舞も和歌の教養も素晴らしい。六条御息所サロンはこういう女房で満ち満ちていたのであろう。

 ⑤六条御息所邸の上流ぶりとの対比で下町の夕顔宿を語り、気安い夕顔宿への執着を語っている。
  

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4 Responses to 夕顔(7) 六条御息所を訪問

  1. 青玉 のコメント:

    今回、夕顔からはリンボウ先生から寂聴さんの御本に変えました。
    と言うのも図書館は二週間、更に延長二週間と言うわけで変更せざるを得ない事情があります。
    霧のいと深き朝・・・
    この場面、テキストはさらりと訳されていますが寂聴さんのはちょっと生々しく表現されています。激しい愛の疲れに・・・
    それぞれの訳しかたの相違がおもしろいですね。

    中将の君、源氏には少しもなびかず、さらりと交わしてしまう所はさすがですね。
    これでこそ上流に仕える女房と言うものでしょうか。

    • 清々爺 のコメント:

      現代語訳、色々な人のを取り混ぜて参照されればいいと思います。何れにせよ原文を自分がどう読むかですからね。

      寂聴さんの訳、そんなにも飛躍はしておらずいい具合だと思います。

       御頭もたげて見出だしたまへり

      確かに久しぶりに源氏と一夜を過ごした疲れでぐったりしてたのだろうが、別に激しい愛の疲れだけじゃなくて、互いに気を遣い合ったり将来のことを考えたりで源氏と居ることに疲れたということじゃないでしょうか。17才と24才、愛の交歓だけなら疲れるんじゃなくむしろスカッとするのじゃないですかね。それより精神的な倦怠感だと思うのですが、、、。
       
         →髭白大将、お召しです。窯変はどう書かれているのでしょうか。

      中将の君。ホントかっこいいですね。きっとこれを読んだ女房たちは自分をなぞらえて光の君に想いを馳せたのではないでしょうか。

      • 髭白大将 のコメント:

        ちょっと遅くなりましたが、お召しにより参上。
        ここの所、「窯変」では以下のようになっています。

        御帳台の前に立つ几帳を、中将はついと脇へ寄せる。帳台の奥なる主人が私の立っていく姿を、そのままに見送るためである。
         私は振り向かずに立って行く。その私の後ろでは、長く伸びた黒髪を波打たせた気品のある女が、白い蛇(くちなわ)のように、ただ頭だけを擡げて見送っている。”自分の男”が霧深い夜明けの中に立って行くのを。

        という調子で「白い蛇のように」と御息所を形容している以外は特に変わった書き方がしてあるわけではありません。疲れた御息所が頭だけを上げて…というだけでよしとしたのでしょうか、案外、淡々と書かれています。面白いのは私の岩波文庫版(底本は青表紙本)では「御髪もたげて」となっている点。やっぱり底本によって少しづつ違いがありますね。

        • 清々爺 のコメント:

          お待ちしていました。よく分かりました。白い蛇は官能的ですがまあ淡々としてますね。

          1.岩波文庫版の紹介ありがとうございます。小学館テキストでは「御頭」に「みぐし」とルビがあり、脚注に「貴人の頭髪。転じて頭・首」とあります。原本は平仮名だから「みぐし」とあってそれを「御頭」「御髪」と漢字をつけたのでしょうかね。
           だから、窯変も「長く伸びた黒髪を波打たせた気品のある女が」と表現してるのでしょうか。

          2.円地文子訳みてみました。
           「女君は静かに身を起して外の方へ眼を向けられた。枕元の御髪筥にうずたかくたたなわっていた黒髪が、女君の起き直ってゆかれるのにつれて音もなくゆるゆると背を伝い上ってゆき、やがて黒漆の滝のように背中一面に流れた」

           大分脚色していますが、これは黒髪を強調しています。でも激しい愛の疲れでなんて書かれていません。

           無理やり深読みするより、「私の男」が出ていくわ、、、ぐらいで余韻を残しておくのが一番いいのかもね。

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