源氏物語の舞台

テキストは字ばかりで誠に味気ない(小さな絵が極まれに出てくるが)。どんなところの(地図上の)どんな舞台で(屋敷の様子など)物語が展開しているのか視覚で感じておくと物語を理解する上で助けになると思います。

ムック本などで源氏物語の舞台を歩くなんてのが沢山出ているので参考にするといいでしょう。でもそれは源氏物語への興味を深めるためにはいいでしょうが、読み解きには余り関係がありません。むしろ地図です。これはあれば便利だと思います。

お勧めは「京都源氏物語地図」(思文閣出版)。表に京内、裏に京外の地図があるだけのものだが登場人物の居宅が網羅されている。源氏がどの屋敷に居てどの屋敷の女君を訪ねたのかが分かるので臨場感が出るのです。我が講読会では都度地図を広げ舞台の位置関係を確認していました。「なんだ、すぐ隣じゃないか」とか「あれ、これ大分遠いな」なんて風に。これはよかったです。

京外についても私は嵯峨ぐらいしか知らなかったので便利に使えました。宇治十条では宇治との位置関係、比叡山・小野との位置関係なんかが重要です。距離やルートがイメージできると匂宮や薫が如何に苦労して宇治に通ったのかがよく分かります。

他では須磨・明石は自明ですし、後は玉鬘の九州・長谷寺、住吉神社、逢坂の関くらいでしょう、地図などなくても大丈夫です。

また舞台をイメージするのに、内裏の図・六条院の図など必要です。冒頭桐壷更衣が桐壷から帝の御前に渡るのがどれほど遠かったのか、位置関係はどうだったのか頭にないと、いじめの感じがつかめませんから。内裏の図、テキストにもあるにはあるのですが第6巻まで出てこない、この点不親切。でもネットにいっぱいありますので参照されればいいでしょう。

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9 Responses to 源氏物語の舞台

  1. 式部 のコメント:

    本当に「京都源氏物語地図」は優れものです。物語に出てくる場所の位置関係が一目でわかります。想像力を具体的にかきたててくれます。これは手元に置いたほうがいいですね。
    物語の細部をしっかりつかむためには、平安京内裏図、平安京大内裏図、清涼殿図などもあった方がいいと思います。物語の最初の「桐壷」の場所がわかっているほうが、理解もしやすいと思います。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。「想像力を具体的にかきててる」、、、これこそ原文を味わう秘訣じゃないでしょうか。苦労して、工夫して自分の頭の中に物語の舞台を思い描く。すう~っと現代語訳で読み飛ばしているとこの味わいは出てこないのです。

      「桐壷」で桐壷更衣が亡くなり帝が命婦を遣わし母君を慰める段(壺前栽と呼ばれる段①P27~36)、最初読んだ時、宮中からどんな遠いところかと思ったんだけど、更衣の里は二条院。そんなに遠いところではないって分かって納得したこと思い出します。

  2. 青玉 のコメント:

    桐壺(ニ)を読んでいて清涼殿から最も遠い東北隅とあり、かなり遠いことが想像できます。「打橋 渡殿のここかしこの道にあやしきわざをしつつ」とはすごいですね。
    当時の女性の嫉妬や憎悪のすさまじさ、ちょっと幼稚と言うか笑ってしまいました。
    現代はどうなんでしょうね。もっと陰湿かしら?

    「京都源氏物語地図」なんてのがあるんですか、便利そうですね。調べてみます。

    • 清々爺 のコメント:

      「京都源氏物語絵図」とかもそうですが、この分野アマゾンでも中古版で安く手に入ると思います。テキストも多分真っ新で手放した人も多いでしょうからその方がお買い得かもしれません。

      「あやしきわざをしつつ」、、、このくだり確かに強烈ですね。でも誰が言い始めたか分かりませんが(多分ずっと昔=鎌倉とか室町とか=の注釈にあったのでしょう)、現代語訳で一律に「汚物をまき散らした」などと言ってるのは解せません。余りに下品な汚い解釈じゃないでしょうか。そこまで行かなくても繊細な更衣は傷ついたと考えるべきじゃないでしょうかねぇ。。。ちょっと10月に書くべきところ先取りしてしまいました。

  3. nif 改め 髭白大将 のコメント:

    引越しでドサクサしており、やっと岩波文庫版源氏6巻、橋本治「窯変源氏物語」をダンボールの山から掘り出したところです。桐壺の帖「あやしきわざを…」に関してですが、「汚物を…」の記述は江戸時代の柳亭種彦の草双紙「偽紫田舎源氏」が出典だとどこかで読んだ記憶があります。原典には当たっていないので、気になる方はお確かめのほどを。現代語訳でこれを採用しているのは女性同士の陰湿な意地悪を……ん? これをいうとセクハラになるか。

    • 青玉 のコメント:

      確か金谷さんでしたよね。
      お久しぶりです。skyblueこと青玉です、よろしくお願いします。
      お引越しをなされましたか?
      髭黒ではなく髭白がなかなか良き感じですね~

    • 清々爺 のコメント:

      引越し、お疲れ様です。でもいいじゃない、新しくなって。どうぞ気分一新お付き合い下さい。

      髭白と名乗るからには貴君には今回は玉鬘をしっかりと読み込んで欲しいと思います。髭黒には勿体ない、いい女なんですから。
      それと「窯変」をベースにした読み解きもお願いしますね。

      ところで「あやしきわざをしつつ、、」のくだり、オサムちゃんはどう言ってるのですか。。

      • 髭白大将 のコメント:

        「窯変源氏」ではそのくだりは「殿舎殿舎の間にかけ渡す仮設の内橋、あるいは通り抜けの殿舎の渡殿のここかしこに不浄の物を置き仕掛け、送り迎えの者達の衣の裾に、あまりといえばあまりの耐えがたき事態を出来せしむることも……」と訳していますね。つまり橋本訳も結構下品な解釈ですな。でもかなり原文には忠実だと思いますが、いかが?

        • 清々爺 のコメント:

          ありがとうございます。まあそんなには飛躍してない、妥当なところでしょうね。
           寂聴訳:「汚いものなどを撒き散らし怪しからぬしかけをして」
           円地訳:「不浄なものを撒き散らして置いたりして」

           原文は単に「あやしきわざをしつつ」だけですからね。その後に「衣の裾たへがたく、、、」ってあるけど、要は式部はすらっと抽象的に(具体的な露骨な表現を避け)記しているだけで後は読者の頭に委ねているんですもんね。「汚物」だとか「不浄の物」とか云わないところがミソだと思うんですけどね。。

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